熊本県立大学(熊本市東区月出3)で現在、「緑の流域治水」の一つ「雨庭(あめにわ)」の実験が行われている。
2020年7月の記録的豪雨による球磨川流域の水害を受け、産学官で持続可能な社会づくりを目指す研究がスタート。 流出抑制、氾濫流のコントロール、土地利用規制など、建造物などのハード面だけでなく、ソフト面の対策を充実させる新しい考え方が「流域治水」。この対策に環境的な視点を組み込んだものが「緑の流域治水」だという。雨庭は、公共施設や住宅、駐車場などの敷地からの洪水流出を抑制する手法の一つで、「緑の流域治水」の取り組みの一環。
県立大の敷地に作った雨庭の実験施設は、アリーナの樋から流れてくる雨水を窪地への貯留と土への浸透により流出を抑制する。アリーナの屋根面積178平方メートルに対して、雨庭の面積は35平方メートル、深さは60センチ。雨庭の出口に水抜きのための直径2センチの管3本を設置する。この実験を検証し、広く県内での適用を考えている。
水際にはイグサやセキショウ等、陸域にはヒゴタイやノコンギク等、熊本県内の在来植物を植える。植物が生育することで土の中に根が入り、目詰まりを防ぎ、浸透能力を維持するのが狙い。外観を良くすることで、眺めても楽しむことができるようにする。
県立大「流域治水を核とした復興を起点とした持続社会」共創拠点プロジェクトリーダーの島谷幸宏特別教授は「河川に集まった水をどうにかするのではなく、その前の雨水を排出しない取り組みが大事。雨庭は大学だけでなく個人宅でも実践できる取り組み。『緑の流域治水』は、まだ一般市民に浸透していない。分かりやすく参加しやすい雨庭のような取り組みで、楽しく広げていきたい」と話す。
県立大の雨庭は、現在開催中の「全国都市緑化くまもとフェア」の「オープンガーデン」会場の一つとなっている。5月28日まで。