熊本市にある老舗映画館「Denkikan」(熊本市中央区新市街)が6月27日、1911(明治44)年の創業以来110周年を記念したトークイベントを蔦屋書店熊本三年坂(安政町)で開催し、過去から現在、今後のイベントまでの抱負を語った。
オーナーの窪寺洋一さんは、創業者である曽祖父から代々映画館を引き継ぐ4代目。創業当初は、芝居小屋を借りて無声映画などを上映していた。その後、1914(大正3)年に1スクリーン800席の木造映画館を現在の場所に建設。1995(平成7)年には3スクリーンに増設するなどの改築を行い、館名を「Denkikan」に変更してリニューアル。席数は、2階=96席、3階=140席、5階=140席で、ミニシアターとしては規模が大きい。2003(平成15)年には、長年の営業の歴史がたたえられ映画館として初めて日本映画批評家大賞特別賞を受賞した。
上映作品の選定については、数ある作品の中から、見て楽しめるだけでなく、社会性やメッセージ性があるものを窪寺さん自らセレクト。上映期間を2週間としているのは、「なるべく多くの作品を見てほしいから」だという。
コロナ禍で動画配信サービスが勢いを増すなか、窪寺さんは「映画館には、そこでしか味わえない臨場感があり、同じ映画をみんなで共有するのが醍醐味(だいごみ)。家で手軽に見られる動画配信サービスは便利だが、映画館には映画にだけ集中できる環境があり、より作品の良さが伝わる」と映画館の存在意義を語る。
今年8月には、ワークショップに加え、ゲストや活弁士を呼んで無声映画の再現をするなど、子どもたちに映画の歴史と良さを体験してもらうイベントを企画している。