熊本・下通のミュージックバー「SLOWHAND(スローハンド)」(熊本市中央区安政町1、TEL 096-359-4155)が6月末で閉店する。
1990(平成2)年6月、それまでプロミュージシャンとして活動していた岩本哲也さんは、「好きな音楽を自分の哲学で思い切りやりたい」とクラブ通りに同店をオープン。店名は、世界的なギタリスト、エリック・クラプトンのニックネームから付けたという。
開店当初はバーがメインで、その片隅で音楽ができるような店だったという。来店する音楽仲間からの「もっと音楽を楽しみたい」という声を受け、2000(平成12)年12月、ライブスペースがある現在の場所に移転。生の音楽を楽しめる店として、多くの常連客にした親しまれてきた。
今年で33周年を迎えたばかりの同店には、地元のアマチュアミュージシャンだけでなく、全国から音楽好きが訪れる。日本を代表するギタリストのChar(チャー)さんや歌手の斉藤和義さんなど、プロミュージシャンも度々訪れていたという。
「コロナ禍を乗り切ったと思っていた2021年春、夫に咽頭がんが見つかった」と妻の奈々さんが振り返る。4か月の入院とリハビリでがんは克服できたが、以前のように歌うことができなくなった。
「体力も落ち、満足できる音楽を提供できなくなった。お客さまからマスターの演奏を聴きたいとリクエストされたときに応えることができなかった辛さと悔しさから、潮時だと感じた」と哲也さんは話す。
4月に閉店をSNSで伝えた後、閉店を惜しむ声が国内外から相次いだという。連日常連客が訪れ、地元の多くのアマチュアバンドがライブを開いている。
哲也さんは「音楽は、演奏する人と聴く人の両方がいて成り立つ。ここでは、年齢も立場も関係なく純粋に会話と音楽を楽しむことができた。プロ・アマ関係なく多くの音楽人と過ごした幸せな33年だった」と振り返る。
営業時間は18時~24時。営業は6月30日まで。