「南区防災研修会」が3月2日、富合雁回館(熊本市南区富合町清藤)で開催された。
「地域のつながりで備える防災力向上」をテーマに行う南区主催の3段階の育成プログラム最後となる第3弾。校区防災連絡会、南区在住の防災士、消防団、防災サポーターを対象に募集し、約60人が受講した。
冒頭、本田正文南区長が「1月1日に起きた能登半島地震に関し、本市としても交代で職員を派遣し全力で支援を行っている。今日は実際に派遣された職員の報告もある。本市は熊本地震を経験してるからこそ、地域のつながりがたいせつなことを知っている。この研修を通して、防災士と校区防災連絡会はもとより、地域防災リーダーや消防団などとも、顔の見える防災の輪が広がれば」とあいさつ。
研修は基調講演とワークショップの2部構成。講演に入る前に、能登半島地震に絡み石川県珠洲市に初期段階で派遣された南区総務企画課の松山仁宣さんが当時の様子や取り組みを報告。「初動時の避難所運営については行政の手が回らず、地域住民による運営が主だった」と説明した。
続く1部はNPO法人「ソナエトコ」の水野直樹理事長が、「地域のつながりと防災力強化」について講演。最初に直近まで自身も石川県穴水市に支援に入っていた内容を報告。「松山さんが派遣された時期と変わらず地域住民による運営が続いていた。行政にしかできないことに行政の力を集約し、地域で担当できる内容を地域住民が行うことで、結果として復興も早くなる。自治会長や地域の役員だけで頑張ろうとせず、防災士の力などを借りて地域全体で取り組んでいくことが大切」と話した。
水野さんの講演後、松山さんが「熊本市地域防災リーダー制度」「機能別消防団防災サポーター」について紹介し、地域防災に係る自助・共助の取り組みの促進について説明した。
2部は「くまもとクロスロード研究会」の松里健一事務局長が、想像力を高めて「もしも」に備える防災教育のカードゲーム「クロスロード」を紹介した。クロスロードは、阪神・淡路大震災で災害対応に当たった神戸市職員へのインタビューを元に作られたゲームで、1つの問題に対し2つの選択肢を準備。参加者に自分だったらどちらを選ぶかを考えてもらい、その根拠とともに班で意見交換を行うもの。災害を自分の身に引き寄せて考えると同時に、他者のさまざまな考えを知ることができる。「ふに落ちることは意外にすぐ忘れてしまう。はっきりとした答えが出ず、もやもやが残るからこそ忘れない。防災に明確な答えはないからこそ、常に考えてほしい」と松里さん。
南区総務企画課防災班担当の松山仁宣さんは「3回シリーズで実施したが、最後はたくさんの方に参加いただき、防災に関して地域連携の必要性の気づきになったと思う。地域のつながりでさらに防災力が向上していくよう、行政としてもさまざまな取り組みを考えていきたい」と話す。