
熊本市現代美術館(熊本市中央区上通)で9月15日、展覧会「和食~日本の自然、人々の知恵~」の関連企画トークイベント「熊本の未来と食を考える」が開かれた。
同展は、ユネスコ無形文化遺産に登録されてから12年が経過した「和食」の多様性と奥深さに迫る内容。食材や調理技術、発酵文化、歴史的背景、現代の食の課題などを幅広い視点から紹介している。
トークイベントには、美術家の島袋道浩さんと、発酵レストラン「AOKABI」(中央区草葉町)店主の廣岡眞也さんが登壇。島袋さんが「AOKABI」を訪れた時に廣岡さんの料理や考えに共感し、コラボレーションの形を模索する中で今回の企画が実現したという。会場には一般参加者約20人が集まった。
島袋さんは、国内外を旅しながらその土地の生活や文化を題材に、パフォーマンスや映像、彫刻、インスタレーションなどを制作している。「食べ物をモチーフにした絵画が多いように、食とアートは昔から近い関係にある。素材をどう完成品へと近づけるかという視点は共通している」と話した。
廣岡さんは「おいしいより体にいいものを重視している。発酵の過程で味が変化したり、思わぬ組み合わせで新しい味が生まれたりするのが面白い」と話し、熊本の豊かな食材を生かして新たな価値を生み出すことの重要性を伝えた。参加者には、発酵させたあんを南関あげで包んだ料理、発酵飲料「コンブチャ」が提供された。
企画を担当した同館学芸員の里村真理さんは「和食展に合わせて実現させたかった企画。グローバル化が進む今だからこそ、日本の伝統的な発酵技術の価値を再認識してもらえれば」と期待を寄せる。