熊本市の映画館「Denkikan」(熊本市中央区新市街)で6月3日、映画「発酵する民」の上映が始まった。熊本県で初めての劇場公開となる。
同作品は、は2011(平成23)年3月11日に発生した東日本大震災後に神奈川県鎌倉市で生活する女性たちが結成した「イマジン盆踊り部」に7年間密着したドキュメンタリー。「3.11後の暮らし」から生まれてくる女性たちの唄や踊りが地域の人と人をつなげ、「平和」の輪を描く姿を表している。
作品では、パン店や酒蔵なども取材。微生物の「発酵」の世界を見つめ、震災を経験した人や地域がゆっくりとし変化していく様子を、「まるで発酵していくかのように」描いているという。
初監督で個人製作の同作品は昨年、東京・渋谷の映画館「ユーロスペース」(東京都渋谷区)で劇場公開がスタートし、今年は全国27館以上で公開する。
平野隆章監督は「コロナ禍の今は、原発事故後の先が見通せない状況と似ている。この映画は、3.11の震災を経験した鎌倉の人々が、不安定な社会のムードが漂う中でこれまでを振り返り、新しいもの(唄や踊りなど)を創り出し、人と出会い、日常を積み重ねていく姿を描いている。腐敗の対義語である発酵の世界にも着目し、人間を中心に置き過ぎない世界を模索する。3.11後に人々の間に生まれた『良い方向に向かいたい』という気持ちは、きっと今も続いている。その時に創り出したものが、コロナ禍で希望を語り直すはず」と話す。
上映時間は14時~15時40分。料金は1,900円。今月9日まで。